第37回技術研究発表会
第32回交流展示会

テーマ

アーバンインフラ再考
‐未来に向けた安全・安心で持続可能なまちづくり‐
 アーバンインフラ・テクノロジー推進会議が設立された1980年代、人口が増加し、都市化・情報化・国際化・サービス経済化をはじめとする経済社会の急速な進展の中で、都市は、産業、経済、文化、市民生活の総合的受け皿の役割を求められていました。このようなニーズに対応して、継続的な都市の発展と高度で豊かな都市化社会の実現には、都市の基盤であるアーバンインフラの強化・充実を図ることが不可欠でした。当時も、アーバンインフラは、活力ある都市づくりのための交通・情報・通信等の活力基盤、快適な国民生活のためのリゾート等の快適基盤、生活の拠点である居住基盤、防災・防犯・自然環境保全等の安全基盤など多様な広がりを持つものとして捉えられており、本推進会議は、技術的知見で、高度で豊かな都市の形成に重要な役割を果たしてきました。

 しかし、都市を取り巻く環境が大きく変化し、急速な人口減少に伴って都市の空洞化が進む中、少子高齢社会や国際化、地球温暖化、自然災害に対する強靭化等、さらに多様で複雑な問題に対応しなくてはなりません。また、近年は、高度成長期に一斉に整備されたアーバンインフラの老朽化も深刻な都市問題となっており、水道管破損事故や学校等公共施設の崩落事故等の人的災害が顕在化しています。これら老朽アーバンインフラは、災害多発国であるわが国においては一層深刻な2次被害をもたらすことも懸念されています。加えて、能登半島地震の復興では、アーバンインフラの老朽化だけでなく、高齢社会による投資的余力の低下やコミュニティ崩壊が災害復旧能力を弱体化させている点も指摘されています。

 一方、アーバンインフラは物理的な機能だけでなく、地域社会の健康や幸福を支える社会的インフラとして、「人中心」のくらしを実現し、人々の生活の質を向上するための重要な役割を担っています。そのためには、デジタル技術やロボット、AI等の先端技術を、プランニングや建設、維持管理・マネジメント、評価等に有効に活用することや、官民連携や分野間連携、広域連携など適切な事業枠組みの構築に向けた検討、さらには多様な主体のまちづくり参画をあらゆるプロセスで可能とする仕掛けや社会実験・暫定利用を含む機動的な事業展開など、幅広い意味での“技術”の向上を図ることも欠かせません。

 このような都市を取り巻く社会情勢の様々な変化を踏まえると、当初共有されていたアーバンインフラの概念は、現在また将来に求められるものへと展開していく必要があり、アーバンインフラの質や価値、内容を今一度考えるべき段階にあります。
 そこで、第37回技術研究発表会は「アーバンインフラ再考 ―未来に向けた安全・安心で持続可能なまちづくり―」をテーマとして開催いたします。